こんばんは、オダシ(@OdaCM_T)です。
この記事を書いているの私は、養成課程在籍時に
細胞検査士認定試験を、一回でパスしました。
その後、大学院に進学し、
後輩たちの研究や学習のバックアップを行っています。
学生たちから、こんな要望がありました。

というものです。
前の問題はこちら(2019年度 第52回 技術-1.対物レンズについて正しいものはどれですか)
次の問題はこちら(2019年度 第52回 技術-3.液状化検体細胞診(LBC)について正しいものはどれですか)(2020.8.2追記)

目次
問題 技術-2【第52回細胞検査士認定試験 一次試験筆記】

2.対物レンズについて正しいものはどれですか。
A.接眼レンズ取付け面から結像レンズまでの距離を機械的鏡筒長という 1. A, B
B.10倍の対物レンズのカラーコードはJIS規格にて緑色と規定されている 2. A, E
C.対物レンズの倍率が高いほど同焦点距離は長くなる 3. B, C
D.対物レンズの倍率が高いほど開口数が大きい 4. C, D
E.開口数が大きい対物レンズほど作動距離は短くなる 5. D, E
解答は5. D, Eです。
細胞検査士にとって、
顕微鏡は商売道具の一つなので、
基本的な事項は押さえておきたいところです。
本問のポイント
この問題のポイントは「対物レンズの性能把握」です。

知っておくべき対物レンズの性能
顕微鏡を新規で使う際には、
対物レンズの性能を比べ、
適切な対物レンズを使う必要があります。
性能比較に必要な情報は対物レンズに
記載されていることが多いです。
特に、
- 開口数
- 倍率
- 作動距離
- 同焦点距離
- カバーグラス厚
- 機械的鏡筒長
- 液浸、乾燥
の項目は確認するようにしましょう。
補足としてカラーコードも知っておきましょう。

それぞれの特徴について説明していきます。
開口数
開口数(NA)は対物レンズが光を集めることができる範囲で、
分解能や焦点深度、像の明るさにかかわります。
開口数が大きい、つまり集める光が多いほど
分解能が高くなり、明るい像となります。
液浸系では対物レンズとカバーガラスの間の媒質の屈折率を考慮する必要があり、乾燥系対物レンズの開口数に屈折率nをかけた値となることに注意です。
NA=n・sinα
一般的には乾燥系ではn=1.0(空気)、液浸系ではn=1.52(油浸オイル)のことが多く、他にはn=1.33(水)があります。

倍率
倍率(M)は、顕微鏡で見る像が実物より
どれくらい拡大されているかを示すものです。
基本的には高倍率ほど、小さいものを観察できますが、
顕微鏡を扱う上では、分解能の高さも重要です。
レンズが高倍率であっても、分解能が不十分だと、
標本の細部を観察することはできません。
標本の細部を観察するときには、
特に有効倍率(顕微鏡の総合倍率)を気にしますが、
NAをレンズの開口数として、
500NA<(総合倍率)<1000NA
を満たしていると良いと言われています。
倍率が1000NAを超えると
無効倍率やバカ倍率と呼ばれます。

作動距離
作動距離は、ピントが合っているときの
対物レンズの先から標本面までの距離です。
高倍率、開口数が大きいレンズほど作動距離は短くなります。

同焦点距離
同焦点距離は、ピントが合っているときの
対物レンズが顕微鏡についている面から標本面までの距離です。
この長さは国際標準化機構(ISO)で規格が定められています。
作動距離と異なり、倍率によって同焦点距離が変化することはないので、整理しておきましょう。

カバーグラス厚
カバーグラス厚は、その対物レンズが対象とできる標本の種類を表しています。
カバーあり、カバーなし、両者共用の3種類の表示になります。

機械的鏡筒長
機械的鏡筒長は、接眼レンズの取り付け面から
対物レンズが顕微鏡についている面までの距離のことです。
有限、無限とありますが、病理業務では無限のことが多いかなと思います。

液浸系、乾燥系
対物レンズには、標本との間に液体を満たして使うもの(液浸系レンズ)と乾燥状態で使うもの(乾燥系レンズ)があります。
用いる液体には油浸オイルや水、グリセリンが用いられることがあります。
対物レンズには、
- Oil:油浸オイル
- W:水
- Gly:グリセリン
のように表示されています。

補足:カラーコード
カラーコードは対物レンズ先端部分ついています。
カラーリング(色帯)によって、カラーリングの色から倍率や浸液がわかるようになっています。
対物レンズには
- 4倍:赤
- 10倍:黄
- 20倍:緑
- 40倍:青
- 100倍:白
と表示されています。

問題解説 技術-2【第52回細胞検査士認定試験 一次筆記試験】

2.対物レンズについて正しいものはどれですか。
A.接眼レンズ取付け面から結像レンズまでの距離を機械的鏡筒長という 1. A, B
B.10倍の対物レンズのカラーコードはJIS規格にて緑色と規定されている 2. A, E
C.対物レンズの倍率が高いほど同焦点距離は長くなる 3. B, C
D.対物レンズの倍率が高いほど開口数が大きい 4. C, D
E.開口数が大きい対物レンズほど作動距離は短くなる 5. D, E
解答は5. D, Eです。
この問題は、上記の対物レンズの特徴を知っておけば心配なしです。
選択肢の中で、
A.接眼レンズ取付け面から結像レンズまでの距離を機械的鏡筒長という
は、機械的鏡筒長の定義が接眼レンズ取付け面から対物レンズの胴付け面までの距離なので誤った選択肢となります。
B.10倍の対物レンズのカラーコードはJIS規格にて緑色と規定されている
は、10倍の対物レンズはカラーコードが黄色であり、緑色に規定されているのは20倍の対物レンズなので、誤った選択肢です。
C.対物レンズの倍率が高いほど同焦点距離は長くなる
は、同焦点距離は倍率に依存しないため誤った選択肢となります。
まとめ:問題 技術-2【第52回細胞検査士認定試験 一次試験筆記】
今回は「第52回細胞検査士認定試験 一次試験筆記 問題 技術-2」についてまとめてきました。 おさらいします。
- 問題のテーマは「対物レンズの性能把握」
- 過去10年間で複数回出題されているテーマです
- 顕微鏡やレンズについての知識は検査士に欠かせません
皆さんが、一次試験を無事突破することを願っています。