こんばんは、オダシです。
普段は大学病院の臨床検査技師として働きながら、医療系の大学院生(M2)をしています。
医療系のトピックや臨床検査、細胞検査について書いてます。
前回は、新型コロナウイルスの検査から発展して、検査の有用性の判断基準として「感度」と「特異度」についてまとめました。
今回は、検査の有用性を考えるうえで、必要なもう一つの基準、「的中率」についてまとめています。
的中率を理解しよう
前回のおさらいです。
どんな検査であっても、検査を受けるときにはその検査の特徴を理解して、判断することが必要ですとお伝えしました。
前回は検査の判断基準の一つとして、「感度」と「特異度」について学びましたね。
今回は「的中率」を学びましょう。
今回も具体例を使って説明していきます。
Xというウイルスの検査キットがあります。
Xを使うと、「陽性」か「陰性」がわかります。
Xを実際に使ってみた結果を次の分割表.1に示します。

A、B、C、Dのカテゴリはこんな意味です。
- A:検査で陽性で、疾患もあった(真の陽性)
- B:検査で陽性だが、疾患はなかった(偽陽性)
- C:検査で陰性だが、疾患があった(偽陰性)
- D:検査で陰性で、疾患もなかった(真の陰性)
前回の記事では「感度」と「特異度」は次のように決められていましたね。
「感度」: 患者(疾患がある人)のうち、検査で陽性の人の割合 、つまりA/(A+C)
「特異度」:健常者(疾患がない人)のうち、検査で陰性の人の割合 D/(B+C)
この知識をもとに「的中率」を学んでいきましょう。
「的中率」ってなんだ?
「的中率」は検査結果の陽性、陰性の両方について評価します 。つまり、「陽性的中率」、「陰性的中率」を考えることが必要になります。
今回の検査でいえば
「陽性的中率」:検査が陽性になった人の中で、患者(疾患がある)の割合、つまりA/(A+B)
「陰性的中率」:検査が陰性になった人の中で、健常者(疾患がない人)の割合、つまりD/(C+D)
ということになります。
計算の方法は、「感度」「特異度」の方法を入れ替えたような感じですね。
ここまでわかってもらえればあと一歩です。
「的中率」には「感度」「特異度」とはちがった性質がひとつあります。
それは、有病率との関係性があるということです。
有病率とは、集団のうち患者(疾患ありの人)がいる割合です。
ここで、もうひとつ具体例を使います。
Yという検査キットは
- 感度:80%
- 特異度:80%
という特徴があるとします。
この検査キットを
- 患者が100人、健常者が100人で全体200人の集団(有病率:50%)
- 患者が100人、健常者が900人で全体1000人の集団(有病率:10%)
の二つの集団に対して使った時の「的中率」を考えてみましょう。
1. 200人の集団に対して実際に使った結果(分割表.2)

分割表.2は次の特徴となります。
- 陽性的中率:80% 80/(80+20)
- 陰性的中率:80% 80/(20+80)
計算すれば出てきますね。
では、もう一方はどうでしょうか。
2. 1000人の集団に対して実際に使った結果(分割表.3)

分割表.3は次の特徴となります。
- 陽性的中率:約47% 80/(80+90)
- 陰性的中率:約98% 810/(20+810)
二つの具体例から同じ検査を行ったとしても、集団の有病率の違いで、的中率にちがいが出ることがわかってもらえたかと思います。
一般的には、有病率が小さい疾患ほど、陽性的中率が減少します。(今回の新型コロナウイルスにも同じことがいえます…)
そのため、有病率が低い疾患に対しては、追加検査を行って、検査結果を精査する必要があります。
まとめ
今回は、「的中率」についてまとめました。
おさらいします。
- 「陰性的中率」:検査が陰性になった人の中で、健常者(疾患がない人)の割合
- 「陰性的中率」:検査が陰性になった人の中で、健常者(疾患がない人)の割合
- 「的中率」は集団の有病率によって、大きく変化する。
今回の記事が皆さんの役に立てば幸いです。
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